Sense of Wonder

個人的に読んで見て聞いて触って味わったモノについて書き留めているブログです。

グラン・トリノ

妻を失い、息子たちにも疎まれながら孤独に暮らす老人。隣人の東洋人や、黒人などにも平気で差別用語を吐くような彼が、隣に住む姉弟を通じて少しずつ変わっていく様子が、時にクスクス笑わせながら、丁寧に描かれます。
しかし後半、移民による暴力事件などにより状況はどんどん悪い方へと転がっていきます。

頑固オヤジのイーストウッドは、歳をとってもかっこいい。普段はまぁそれなりの年寄りなんだけど、ここぞというときには、ダーティハリーが顔を覗かせます。
でも昔のイーストウッドの映画を観て育った世代には、「許されざる者」で西部劇の、「グラン・トリノ」でアクション映画のヒーローの、その後の決着を付けているようで、なんだかお別れ前の身辺整理みたいな気が一瞬してしまいました。

内容の割りに重苦しくは感じません。それはつねに前へ進むための希望を描いているからです。いい映画でした。
お別れ前の身辺整理なんて書いてしまいましたが、ラストを見る限り、昔の俳優業は区切りを付けて、監督として新しい作品に挑戦していくぞという意気込みだと勝手に解釈することにしました。

80点。

ホノカアボーイ

ホノカアボーイの試写会に行ってきました。
分類すれば、「かもめ食堂」とか「めがね」のシリーズ?に近い癒し系の映画かなと思っていました。美味しそうな食べ物が出てきたり、静かなハワイの小さな町が舞台になっていたり、狙いは明らかにその路線みたいなんだけど、なんだか物足りない。
場所は、ハワイにあるホノカアという町。映画で描かれるのは浜辺とキャンプ場みたいな森と町の中の寂れた映画館のせいぜい半径50mくらいの範囲だけ。せっかくハワイまで行ってロケしているのだろうに、全然その雰囲気がない。ほんとにハワイだったんだろうか?
登場人物もその舞台同様薄っぺらで、生活感が希薄。そりゃお金の掛からなそうな場所だけど、主人公の男の子はいったいどうやって暮らしを立ててるんだろう。一応映画館で働いているようだけど、しっかり仕事しているようにも見えないし、何のためにここにいるのかもわからない。
主人公の世話をやく、ビーさん役の倍賞智恵子さんも存在だけで深みのある役をこなせそうなのに、どうにもそういうふうには持って行きたくないらしい。何の前触れもなくいきなり目が見えなくなったり、脚本も全然考えてない感じ。
私のイチオシ若手女優、蒼井優も嫌な女役だし、深津絵里さえ何の絡みもないチョイ役。贅沢な使い方というか、名前だけ載せて人目を引こうというせこさか。
せめてもう少し、美しい風景を堪能させてもらえれば良かったんだけどね。
ホノカアという地名を知ったのだけは収穫でした。

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採点:40点