妻を失い、息子たちにも疎まれながら孤独に暮らす老人。隣人の東洋人や、黒人などにも平気で差別用語を吐くような彼が、隣に住む姉弟を通じて少しずつ変わっていく様子が、時にクスクス笑わせながら、丁寧に描かれます。
しかし後半、移民による暴力事件などにより状況はどんどん悪い方へと転がっていきます。
頑固オヤジのイーストウッドは、歳をとってもかっこいい。普段はまぁそれなりの年寄りなんだけど、ここぞというときには、ダーティハリーが顔を覗かせます。
でも昔のイーストウッドの映画を観て育った世代には、「許されざる者」で西部劇の、「グラン・トリノ」でアクション映画のヒーローの、その後の決着を付けているようで、なんだかお別れ前の身辺整理みたいな気が一瞬してしまいました。
内容の割りに重苦しくは感じません。それはつねに前へ進むための希望を描いているからです。いい映画でした。
お別れ前の身辺整理なんて書いてしまいましたが、ラストを見る限り、昔の俳優業は区切りを付けて、監督として新しい作品に挑戦していくぞという意気込みだと勝手に解釈することにしました。
80点。