Sense of Wonder

個人的に読んで見て聞いて触って味わったモノについて書き留めているブログです。

キングコング 怪物と怪獣の境界線

キングコング


この映画のキングコングは、怪物です。怪獣ではありません。
怪物と怪獣の違いは何かというと、生物としての枠に収まっているか、いないかの違いです。恐竜がいくら大きくても怪獣ではないように、コングも信じられないような巨大なゴリラですが、あり得ない大きさというわけでもありません。
ちなみに上の図は、「巨大生物図鑑」ふうに描いてみました。
1万年前に絶滅した地上オオナマケモノは、体長約7メートル。地上にもこんな大きな哺乳類が歩き回っていたんですね。
キングコングは、体長約7.5メートル。体長は、それほど違いません。
それでも人間の大きさと比べると、こんなに大きい。この巨大なキングコングが人間スケールの街の中で暴れまわります。

上映時間3時間は、ちょっとは長すぎ。様々な人に見てもらう(興行的に成功をおさめる)ためか、野心家の成功物語から秘境物、恋愛あり、アクションあり、悲しい結末あり、何でもかんでも詰め込んで3時間超えちゃったって感じです。
いろいろなタイプごとに宣伝できるから都合がいいのかもしれないけど、やっぱり正しい見方は、冒険大活劇でしょう。
巨大なジャングルの王者、キングコングが、走る、跳ぶ、叫ぶ、闘う、大暴れするのを堪能するだけで大満足です。
2度目以降は、おまけのような人間ドラマなんてスキップしちゃいましょう。押し合いへし合い疾走するブロントザウルスたちの足元を一緒になって逃げまどう登場人物。キングコングがティラノサウルスを殴る、投げ飛ばす、口を引き裂く。
恐竜なんかに負けるな、哺乳類代表!と思わず応援したくなる、肉弾戦。
さらに、ニューヨークの街中で自動車などを蹴散らしながらの大暴れ。
やっぱり冒険活劇はこうでなくちゃ。1930年代のニューヨークを再現したCGもみごとだし、コングや恐竜たちの躍動感もすばらしい。

ただ気になった場面もある。
主人公アンがコングにわしづかみにされたまま、恐竜たちとくんずほぐれつの大乱闘であっちに振り回され、こっちに放り上げられ、挙げ句の果てはコングの足に握られて。これじゃむち打ちどころか体中の骨もバラバラになりそうなのに、全然へっちゃらな顔をしているところや、脚本家の先生が体中お化けバッタに食い付かれて、船員見習いの男の子が銃で巨大バッタをすべて撃ち殺す場面。撃ったことのない銃を狙いもおぼつかない腕で、しかも目をつぶって撃ってるし。実は天才的な銃の達人だったのかしらん。
CGは、それなりにリアルにリアルに作り込もうとしているのがわかりますが、こういうシーンを適当に描かれると興ざめ。
それでなくてもこの手の映画は、ありそうもない話をどうやって本当らしく描くかが勝負所のはず。画面作りにばかり一所懸命になりすぎて、物語自体のリアリティをおろそかにしてはいけません。
主人公たちが髑髏島でコングを倒した後、どうやって船まで運び、ニューヨークまで連れ帰ったのか、描かれなかったのも残念です。

ま、細かい点は別にしても迫力満点の映画であることは、間違いありません。

キング・コング [DVD]
キング・コング [DVD]

posted with amazlet at 10.03.11
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン (2007-04-01)
売り上げランキング: 58811
おすすめ度の平均: 4.5

5 単純明快だけど、奥が深い映画
5 コングの表情がすばらしい。
4 監督の思い入れと観客との間にズレが・・・
2 CGは失敗!?
5 アクション満載


未来世紀ブラジル

未来世紀ブラジル


テリー・ギリアム監督による、近未来の情報管理社会を描くディストピア映画。

時は、20世紀。って、もうすでに過去の時代ですが、1985年時点ではまさに近未来。イメージ的には、それこそレトロフューチャーです。タイプライター型のキーボードにディスプレイは、小型のブラウン管をフラットなレンズで拡大してるし、やたらと大量の書類が入り乱れ、部屋の中には、様々なダクトがはい回る。
管理された社会の中で管理する側に立っていたはずの主人公が、一歩まちがうといつの間にか追われる側になってしまう・・・
なんていう暗いテーマは、どこかへ吹き飛んでしまうようなイメージの奔流。
主人公サムの妄想同様、テリー・ギリアム監督の頭の中身をぶちまけたような訳のわからない小道具や映像に身をゆだねることが出来るかどうかが評価の分かれ目でしょう。

それにしても配管工タトルを演じているのがロバート・デ・ニーロ。こんな映画(失礼)の重要だけどもちょい役に平気で出演しちゃうなんて、凄いです。しかも嬉々として演じてるのが伝わってきてとっても楽しそう。タトルが装着するライト付きのメガネも自分でデザインしたそうです。チカラ入ってます。
そういえば、同じ監督の「バンデットQ」でもショーン・コネリーがちょい役で出てましたね。

未来世紀ブラジル
監督:テリー・ギリアム
出演:ジョナサン・プライス、ロバート・デ・ニーロ

映画を見たついでに一緒に読むとおもしろいのが、


「バトル・オブ・ブラジル」未来世紀ブラジルーハリウッドに戦いを挑むー
ジャック・マシューズ 著
ダゲレオ出版

監督のテリー・ギリアムと大手映画会社社長のシドニー・シャインバーグとの「未来世紀ブラジル」の上映を巡る戦い。芸術と商売の対立を描いたノンフィクションです。映画業界の裏側や映画撮影の過程などが満載の一冊です。
アマゾンにも出ていないようなので、古本屋で探してみてください。

かもめ食堂

P子さん(仮名)とふたり、巷で話題になっていた「かもめ食堂」を見に行ってきた。フィンランド協会の上映会です。
映画の舞台がフィンランドということで、協会としては、話題の映画を見てもらって、フィンランドを少しでも知ってもらいたいということらしい。

2006年の映画で、もうレンタルDVDも出てるんだけど、よく行くレンタル屋さんは1本しか入ってないからいつも貸し出し中だった。
P子さんは昔フィンランド語を習っていて、それで無料上映会があるから来ませんかと言われたわけだ。
「ただ」という言葉に弱いP子さんだから、当然行こう行こうとなった。
上映会場に着いてから気がついた。ふたりで往復の地下鉄代かけて見に行くくらいならレンタルビデオ借りた方が安いじゃん。
でもまぁ、映画はとってもよかったです。

フィンランドで食堂を開いた日本人女性サチエ(小林聡美)のごくごくシンプルな日常生活を描いてるだけなんだけど。
書店で知り合ったミドリ(片桐はいり)や謎めいた女性のマサコ(もたいまさこ)もお店を手伝うようになります。
最初はお客の入らない食堂だったけど、少しずつ固定客もついて、だんだんとお客さんも増えてきます。
ヘルシンキの街でゆったりと暮らす人々との妙に心地よい物語です。

三人の女性で小林聡美、もたいまさこ、ときたら「やっぱり猫が好き」を連想してしまいましたが、ドタバタはありません。
ドタバタはないけど、クスクスはあります。
映画を見た後に思い浮かんだのは、高野文子の「るきさん」。
こちらも、るきさんののほほんとした日常を描いたマンガですが、最後は一大決心をするわけでもなく、ひょいとナポリに行っちゃう。そんなマンガでした。

小林聡美さん演じるサチエも肩ひじ張ることもなく、異国の地であっても淡々と日本人してる感じがとってもすがすがしかったりします。
かもめ食堂のメニューはおにぎりがメインで、フィンランド人が食べてるおにぎりは美味しそうでした。
ちなみにP子さんは、時々フィンランド協会主催の料理教室に行きます。
作った料理をタッパーで持ち帰り、食べさせてくれますが、正直言ってフィンランド料理はあまり口に合いません。
食事に関しては、やっぱり日本人でよかった。

かもめ食堂 [DVD]
かもめ食堂 [DVD]

posted with amazlet at 10.03.11
バップ (2006-09-27)
売り上げランキング: 613
おすすめ度の平均: 4.5

5 かもめ食堂
5 ほっこり♪
5 良い映画。
5 人とのつながりがゆるり、ゆるりと紡ぎだされてゆく。
3 原作はすごくいいと思ったんだけど・・・