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2007年8月 3日

キングコング 怪物と怪獣の境界線

キングコング

この映画のキングコングは、怪物です。怪獣ではありません。
怪物と怪獣の違いは何かというと、生物としての枠に収まっているか、いないかの違いです。恐竜がいくら大きくても怪獣ではないように、コングも信じられないような巨大なゴリラですが、あり得ない大きさというわけでもありません。
ちなみに上の図は、「巨大生物図鑑」ふうに描いてみました。
1万年前に絶滅した地上オオナマケモノは、体長約7メートル。地上にもこんな大きな哺乳類が歩き回っていたんですね。
キングコングは、体長約7.5メートル。体長は、それほど違いません。
それでも人間の大きさと比べると、こんなに大きい。この巨大なキングコングが人間スケールの街の中で暴れまわります。

上映時間3時間は、ちょっとは長すぎ。様々な人に見てもらう(興行的に成功をおさめる)ためか、野心家の成功物語から秘境物、恋愛あり、アクションあり、悲しい結末あり、何でもかんでも詰め込んで3時間超えちゃったって感じです。
いろいろなタイプごとに宣伝できるから都合がいいのかもしれないけど、やっぱり正しい見方は、冒険大活劇でしょう。
巨大なジャングルの王者、キングコングが、走る、跳ぶ、叫ぶ、闘う、大暴れするのを堪能するだけで大満足です。
2度目以降は、おまけのような人間ドラマなんてスキップしちゃいましょう。押し合いへし合い疾走するブロントザウルスたちの足元を一緒になって逃げまどう登場人物。キングコングがティラノサウルスを殴る、投げ飛ばす、口を引き裂く。
恐竜なんかに負けるな、哺乳類代表!と思わず応援したくなる、肉弾戦。
さらに、ニューヨークの街中で自動車などを蹴散らしながらの大暴れ。
やっぱり冒険活劇はこうでなくちゃ。1930年代のニューヨークを再現したCGもみごとだし、コングや恐竜たちの躍動感もすばらしい。

ただ気になった場面もある。
主人公アンがコングにわしづかみにされたまま、恐竜たちとくんずほぐれつの大乱闘であっちに振り回され、こっちに放り上げられ、挙げ句の果てはコングの足に握られて。これじゃむち打ちどころか体中の骨もバラバラになりそうなのに、全然へっちゃらな顔をしているところや、脚本家の先生が体中お化けバッタに食い付かれて、船員見習いの男の子が銃で巨大バッタをすべて撃ち殺す場面。撃ったことのない銃を狙いもおぼつかない腕で、しかも目をつぶって撃ってるし。実は天才的な銃の達人だったのかしらん。
CGは、それなりにリアルにリアルに作り込もうとしているのがわかりますが、こういうシーンを適当に描かれると興ざめ。
それでなくてもこの手の映画は、ありそうもない話をどうやって本当らしく描くかが勝負所のはず。画面作りにばかり一所懸命になりすぎて、物語自体のリアリティをおろそかにしてはいけません。
主人公たちが髑髏島でコングを倒した後、どうやって船まで運び、ニューヨークまで連れ帰ったのか、描かれなかったのも残念です。

ま、細かい点は別にしても迫力満点の映画であることは、間違いありません。

キング・コング
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン (2007/04/01)
監督:ピーター・ジャクソン
主演:ナオミ・ワッツ, ジャック・ブラック